2040年の地域医療構想を考える

「高齢者が何人いるか」から「誰が、どう支えるか」へ

厚労省では現在「2040年に向けた新たな地域医療構想」の策定を進めています。

従来は病床機能の分化(急性期、回復期、慢性期など)が中心でしたが、今回は高齢者救急・在宅医療・介護連携・急性期拠点病院の集約まで含めた全般的な医療・介護提供体制の協議が行われています。

従来の地域医療構想は「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」といった病床機能の分化が中心でした。しかし今回の見直しでは、病床だけでなく外来・在宅医療・介護連携・高齢者救急・急性期拠点病院の集約まで含めた、医療・介護提供体制全体の再編を描こうとしています。

この方向性は極めて妥当である一方、「現在の医療・介護サービスが将来も同じように供給される」という前提に立った計画には限界があると指摘されています。

日本経済新聞に掲載された高橋 泰教授(国際医療福祉大学)の寄稿記事(2026年8月29日付)では、現在の構想に対する「3つの重要視点(盲点)」を指摘しています。人口減少や世代の価値観の変化がもたらす医療・介護のリアルと、今後求められる視点について解説します。

記事から見る「2040年医療・介護のリアル」

人口減少による深刻な「供給制約」と病院経営の危機

    生産年齢人口と18歳人口の急減: 2025〜2040年にかけて生産年齢人口は大都市で11.9%、地方都市で19.1%、過疎地域で28.4%減少します。さらに看護人材の供給源となる18歳人口も約3割減少するため、医療需要がピークを迎える一方で現場を支える人手(看護師・介護職員)の不足は免れません。

    病床数ではなく「実際に動かせる数字」へ

    人手不足で夜勤要員や看護師が確保できなければ、どれだけ病床があっても病棟を開けることはできません。地域医療構想で本来議論すべきなのは、従来の計算上の「必要病床数」だけでなく、実際に人員を配置できる「稼働可能病床数」や、物価高・DX投資・施設建て替えに耐えうる「存続可能病院数」です。

    人手不足が生み出す本人・家族の「行動変容」期待水準の変化と外部サービスの活用

    手厚い人手による介護や長期入院が得られないと分かった時、需要は消えるのではなく別の形に変化します。

    • 夜間の見守り不足 ➔ 遠隔センサー・緊急駆けつけサービスへ
    • 遠方家族の手続き難 ➔ 身元保証・家族代行・死後事務支援へ
    • 長期入院の難航 ➔ 見守り付き住宅・在宅看取り・ACP(人生会議)へ

    人口動態だけでなく、「本人の価値観」「住宅事情」「技術の活用」によって、求められる医療・介護需要の形そのものが大きく変わっていきます。

    団塊世代以降の「死生観の変化」と「健院」への転換

    管理・延命から「自ら選ぶ生き方・死に方」へ: 団塊世代以降では、病院や施設の規則に縛られた管理的な延命治療よりも、本人の意思に沿った暮らしや看取りを望む志向が強まります。子ども世代も親の意思を尊重する傾向が高まっており、管理・長期収容を中心とする従来型施設の需要は伸び悩むと考えられます。

    「病院」から「健院」への役割転換

    全日本病院協会会長の神野正博氏が提唱する「健院」のように、単に病気を治す・長期収容する場ではなく、フレイル(虚弱)予防・在宅連携・急変時受け入れ・ACPに基づく看取りを統合した「生活支援型拠点」としての役割が病院に求められています。

    私たちが取り組むテーマと今後の展望

     ―北見在宅圏域における「地域生活インフラ」の構築

    記事が結論づけるように、2040年に向けた地域医療構想に必要なのは「高齢者が何人いるか」だけを見る発想から脱却し、「誰が支えるのか」「本人と家族はどう選ぶのか」「デジタルや外部サービスが何を代替するのか」まで含めて地域全体を再設計することです。

    北見在宅圏域多職種連携・ケアネットワークでは、この時代の変化に対応し、単なる医療・介護の枠組みを超えた「地域生活インフラ」の確立を目指して以下のテーマに重点的に取り組みます。

    【北見在宅圏域における重点取り組みテーマ】

    ACP(人生会議)の普及・推進と意思決定支援の充実

      本人・家族の価値観に寄り添い、人生の最終段階まで「自分らしく生きる」ための対話を地域で支えます

      多職種・多機関による「生活支援型」在宅ケア・看取り体制の強化

      医療・介護だけでなく、身元保証・生活支援・居住支援など多様なリソースと連携したインフラを構築します。

      ICT・スマート技術を活用した見守り&緊急駆けつけ体制の検討

      人手不足を補うデジタル技術やセンサー等の活用事例を共有し、省力化と安心の両立を図ります。

      地域全体を「健院」化するフレイル予防と生活維持の連携

      病気になってから対応するのではなく、虚弱化を防ぎ、住み慣れた地域で健やかに暮らせるネットワークを拡充します。

      地域住民の「人生の最終10年」を支えるため、医療・介護の枠組みを超えた連携を一層深めていきましょう。皆様のご協力と積極的なご参加をお待ちしております。

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