人口減少社会の中で、これからの介護と意思決定支援を考える

令和7年4月17日、オホーツク地区老人福祉施設協議会の総会・研修会で講演を行いました。
この協議会は、主に特別養護老人ホームなど高齢者施設で構成される団体です。

本来は昨年掲載予定だった内容ですが、下書きのまま公開されていなかったため、あらためて整理してご紹介します。

今回のテーマは、「人口減少社会の中で、医療と介護はどう変わるのか」、そして「これからの意思決定支援をどう考えるか」でした。

“2025年問題”は、すでに始まっている

2025年には、いわゆる団塊の世代約800万人が75歳以上となります。
大きな社会変化が起こると言われていますが、日常生活ではまだ実感しにくいかもしれません。

しかし、地域の医療・介護現場を見ていると、変化はすでに始まっています。

北見市から受託している「在宅医療・介護連携推進事業」を通じて感じるのは、人口減少による影響が、水面下で静かに進行しているということです。

介護職員不足、医療機関の負担増、受け皿不足…。
このまま何もしなければ、地域の医療と介護は徐々に維持が難しくなっていきます。

これから起こるかもしれない地域の変化

人口減少と高齢化が進むことで、次のような状況が現実味を帯びてきます。

  • 退院後に介護サービスが受けられない
  • 救急搬送を依頼しても受け入れ先が見つからない
  • 施設入所を希望しても空きがない
  • 医療や介護への不安から都市部へ転出する人が増える

特に地方では、「人手不足」があらゆる課題の根底にあります。「誰かが支えてくれる」前提そのものが成り立たなくなりつつあります。

特別養護老人ホームに求められる変化

特別養護老人ホームでは、今後さらに医療ニーズの高い入所者が増えると考えられます。

これまで施設で対応が難しかった医療処置も、一定程度は受け入れていかなければ、入所者確保そのものが難しくなる可能性があります。

また、

  • 介護職員不足
  • 収益低下
  • 小規模施設の運営困難

などにより、法人合併や事業譲渡も増えていくかもしれません。

その中で重要になるのが、「医療機関との連携」です。

単に“入院先を確保する”という関係ではなく、

「施設でどこまで支えるか」
「どのタイミングで医療につなぐか」

を、日頃から具体的に相談できる関係づくりが必要になります。

デイサービスも転換期を迎える

デイサービスも大きな転換点にあります。

今後は、要介護1・2の利用者まで総合事業へ移行する可能性があり、従来型デイサービスは利用者減少の影響を受けることが予想されます。

背景には、

  • 介護財政の問題
  • 介護職不足
  • 「改善につながるサービス」が求められていること

があります。

つまり、これからは「ただ通う場所」ではなく、

  • 心身機能の維持・改善
  • 生活機能の向上
  • 本人の暮らしを支える成果

が、より重視される時代になっていきます。

元気な高齢者”が地域を支える時代へ

総合事業では、「住民主体の通いの場」が重要視されています。

地域の高齢者同士が体操や交流を行い、軽度者を地域で支える仕組みです。

限られた介護人材で地域を支えるには、

  • 軽度者は地域で支え合う
  • 重度者は専門職が支える

という役割分担が避けられない状況になっています。

介護専門職は、より重度者支援や専門性の高いケアへシフトしていくことが求められるでしょう。

意思決定支援は「最期の話」だけではない

今回の講演で特にお伝えしたかったのが、「意思決定支援」の考え方です。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、単に看取りや延命治療を決めるためのものではありません。

本来は、

  • 本人がどんな暮らしを望むのか
  • どんな時間を大切にしたいのか
  • どんな時に安心できるのか

を支えるための取り組みです。

「施設で看取ること」が必ずしも最善とは限りません。

最期まで施設で過ごすのか、入院するのか。
どんな医療を受けるのか。

それを決めるのは、本人と家族です。

だからこそ、最期の瞬間だけではなく、“今の暮らし”をどう支えるかが大切になります。

これからの15年に向けて

これからの社会は、ゆっくりと縮小していきます。

人に頼ろうとしても、その「人」自体が減っていく時代です。

その中で、

  • どんな利用者を支えるのか
  • どの医療機関と連携するのか
  • 施設として何を大切にするのか

を、今から考えていく必要があります。

そして意思決定支援とは、「死ぬ時の話」ではなく、“その人が、生きている今をどう充実して過ごすか”を支えることなのだと思います。