「地域で通い続けられる仕組み」をどう作るか

令和8年5月29日に開催された日本交通科学学会 分科会にて、「地方都市における通院・移動の現状の問題点」をテーマに報告を行いました。

今回の報告では、令和2年北見市で実施した「移動(買い物・通院等)に関する実態調査」をもとに、地方都市における高齢者の移動課題について、在宅医療・介護・地域包括ケアの視点から整理しました。

近年、地域包括ケアシステムや在宅医療の推進が進む一方で、地方都市では人口減少、高齢化、公共交通の縮小が同時に進行しています。特に北見市のような広域分散型の地域では、自家用車への依存度が高く、「車を使えなくなること」が、そのまま生活機能低下や医療アクセス低下へ直結しやすい特徴があります。実際の現場では、

「冬になると外出できない」
「バス停まで歩けない」
「家族送迎が限界」
「免許返納後に閉じこもってしまう」といった声は珍しくありません。さらに、通院が難しくなることで、

  • 受診中断
  • 内服管理悪化
  • 状態悪化
  • 救急搬送
  • 入院
  • 在宅療養継続困難へつながるケースも多くみられます。

つまり地方都市では、「移動」は単なる交通問題ではなく、地域医療を支える重要な基盤になっていると言えます。

今回の調査では、北見市内の介護支援専門員を対象に、高齢者の通院・買い物等の移動状況について調査を行いました。回答対象は4,000人を超え、要支援1から要介護5まで幅広い高齢者の実態を把握することができました。

分析では、特に次の点が明らかになりました。

まず、移動困難は重度要介護者だけの問題ではなく、要支援段階から既に始まっているということです。買い物については、要支援1の段階から家族支援への依存がみられ、要介護度が上がるにつれて独力外出は急激に減少していました。

また、通院支援は家族介護力への依存が非常に大きく、独居高齢者増加や老老介護の進行により、現在の“家族が支える外来通院”の構造は今後維持が難しくなる可能性も示唆されました。

さらに、通院困難や買い物困難の背景には、単なる交通手段不足だけではなく、

  • 歩行能力低下
  • 持久力低下
  • 転倒不安
  • 認知機能低下
  • 社会的孤立など、フレイルの進行が深く関係していることも見えてきました。

特に注目されたのは、「現在は独力で通院できているが、3年以内に通院困難になる可能性が高い人」が多数存在していた点です。つまり今後は、

「通えなくなった後を支える」だけではなく、

「通い続けられる状態をどう維持するか」という視点が重要になると考えられます。

一方で、調査では制度サービスだけではなく、近所・知人・友人などによるインフォーマルサポートが、実際に生活を支えている実態も明らかになりました。例えば、

  • 近隣住民による通院送迎
  • 知人による買い物支援
  • 地域住民による見守り
  • 昔からの友人による付き添いなど、日常的な支え合いが高齢者の生活継続を支えていました。

今回の発表では、こうした実態を踏まえ、「移動支援は交通施策だけではなく、フレイル対策であり、地域医療政策でもある」という視点から、

  • 訪問診療
  • 救急医療
  • 介護
  • 地域交通
  • 地域づくり

を横断した支援の必要性についてお話しました。

また、今後の光明として、住民主体の通いの場や地域活動など、インフォーマルサポートの可能性についても話し合われました。

高齢者が“地域で暮らし続ける”ためには、医療や介護だけではなく、「地域で通い続けられる仕組み」をどう作るかが重要になります。

今回の報告が、地方都市における移動支援と地域医療のあり方を考えるきっかけになればと思います。

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