医療ソーシャルワーカーの新たな挑戦:在宅医療連携拠点が拓く「退院できる地域」の未来

先週、2026年6月14日に開催された「MSW協会 盛岡全国大会」および「日本医療社会事業学会 岩手大会」のシンポジウムで、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の現在地について発表する機会をいただきました。北見在宅医療圏連携拠点センターの取り組みを通じて、地域医療におけるソーシャルワーカーの役割を再定義する、示唆に富む内容になったと自負しています。

縮小する地域資源の現実と「退院できない地域」の危機

現在の日本が直面しているのは、医師、看護師、ケアマネジャー、介護職員といった医療・介護資源の減少です。この現状は、これまでの「当たり前」を崩壊させ、医療機関の統廃合も進んでいます。その結果、少ない資源で多くの患者さんを支えなければならないという、私たちにとって切実な課題が浮上しています。

これまでの医療ソーシャルワーカー(MSW)の仕事は、退院支援や制度紹介、在院日数の短縮が中心でした。もちろん、これらも非常に重要な業務です。しかし、私は、退院先の「地域」が変わらなければ再入院が増加し、「目の前の疾病のみならず、退院後の『暮らし直し』が重要」という点を強く強調しました。このままでは、患者さんが退院したくてもできない「退院できない地域」が完成してしまうという危機感を、私自身、強く抱いています。

「地域を立て直す」という新たなミッション

では、MSWである私たちは、この現状にどう立ち向かうべきなのでしょうか。私は、「地域の実状を立て直す」という新たな業務の重要性を提言しました。これは具体的に、以下のような地域を実現することを目指します。

   なるべく入院せずに暮らせる「在宅医療」が行き届く

   入院しても自分のことを分かってくれる「ケア」がある

   認知症や要介護になっても周りが助けてくれる「近所の助け合い」がある

   自分に決めたことが実現する「意思実現支援」が成り立つ

これまでのMSWの役割に加え、地域そのものの機能を高め、患者さんが安心して地域で暮らし続けられる環境を作る「地域づくり」への貢献が、私たちには求められているのです。

在宅医療連携拠点との強力なコラボレーション

このような「地域を立て直す」活動の中心となるのが、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」です。しかし、現状の拠点の多くは「会議の事務局」や「調整役」に留まり、与えられた役割をこなすことに終始しているという課題も、私自身、感じています。

そこで私が提案したのは、MSWと連携拠点が「人をつなぐ」から「地域を変える」パートナーへと進化することです。

MSWの役割:個別の退院支援で見えた課題を「地域課題」として抽出し、言語化する。

拠点の役割:その課題を多職種・行政と共有し、具体的な解決策へと構造化する。

これにより、「退院支援の共有化」から「地域づくりの共同化」へとシフトし、MSWは個別の問題を解決するだけでなく、「なぜ同じ問題が繰り返されるのか」を見抜き、地域の課題として提示し、解決していく共同設計者になっていくべきだと考えています。

「手上げ方式」で動き出すワーキングチーム

この新たな取り組みを具体化するため、私の呼びかけで、北見圏域では自主的な「手上げ方式」によるワーキングチームが発足しています。

入退院時情報共有ルール整備ワーキングチーム:情報の分断をなくし、共通の情報共有ルールを整備。

ACP(地域でつなぐACP推進ワーキングチーム:地域で継続的にACPを支える仕組みを構築。

救急搬送適正化・不搬送ルール検討ワーキングチーム:迷わない判断を支える地域ルールの構築。

看取りの質(QoD)調査・地域還元ワーキングチーム:「これでよかった」と思える看取りを増やすための実態調査と還元。

これらはまさに「地域の困りごと」を起点に、多職種が連携し、地域全体で解決に向けて動く、私たちが実践していることです。

MSWは地域の未来を創るキーパーソンへ

今回のシンポジウムを通じて、私は、医療ソーシャルワーカーの仕事が、単なる個別支援に留まらず、地域全体の課題解決と「退院できる地域」の創造へと大きく舵を切る時期に来ていることを改めて強く感じました。在宅医療連携拠点との強力なタッグにより、MSWである私たちが、地域の未来を創るキーパーソンとして、その役割をさらに発展させていくべきだと強く感じています。

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