「地方都市における通院・移動の現状の問題点」を報告しました

先日開催された日本交通科学学会の「超高齢社会における人々の移動ないし搬送に関する委員会合同分科会」にて、「地方都市における通院・移動の現状の問題点」を報告しました。
地方都市、特に北見市における高齢者の通院・移動に関する現状と課題、および今後の対策について、以下にまとめます。

はじめに
北海道の地方都市、特に広域分散型都市である北見市においては、高齢化と人口減少、公共交通の縮小、自家用車依存社会という構造的要因により、「医療へアクセスできること」自体が困難となりつつあります。この状況下では、「病気になること」以上に、「病院へ行けなくなること」が在宅療養継続の分岐点となっています。

北見市の概要と調査結果の要点
北見市は人口108,634人に対し、65歳以上高齢化率が36.6%、75歳以上高齢化率が21.8%と高い高齢化率を示しています。
北見市と北見市医療・介護連携支援センターが令和3年度実施した「移動(買い物・通院等)に関する実態調査」(ケアマネジャー対象、回収率82.4%)では、以下の点が明らかになりました。

①要支援段階からの移動困難化
要支援段階から既に買い物や通院における移動困難が発生しており、家族支援への依存が過半数を占めています。

②家族介護力への高い依存
買い物・通院ともに家族支援への依存が極めて大きいことが示されています。

③主な困難理由
独力での買い物・通院が困難な理由の主因は、身体機能低下(歩行困難、転倒不安、持久力低下、冬期路面への不安など)および認知機能低下(金銭管理困難、買い忘れ、判断力低下など)であることが確認されました。通院においては、移動だけでなく院内歩行、診察内容の理解、会計や薬の受け取りなど複雑な支援が必要であるため、より早期から他者支援依存が強い傾向にあります。

④通院困難予備群の存在
現在は通院可能であっても、回答したケアマネジャーの予測では、3年以内に通院困難化すると予測される「予備群」が多数存在していました。これは身体機能と認知機能の双方を必要とする通院という行為の特性に起因すると考えられます。通院は、診察予約の理解(忘れない)、時間管理(通院身支度)、診察内容の理解、医師との会話、薬局での調剤受け取りなど複雑な認知機能が必要となるからだと推察できます。


⑤インフォーマル支援の存在
近所・知人・友人による送迎や買い物代行といった、制度化されていないインフォーマルな支援が、通院継続を支えている実態も明らかになっています。

訪問診療の現状と課題
北見市における人口10万人あたりの訪問診療患者数は約320人と、北海道平均(約430人)および全国平均(約370人)と比較して低い実態があります。また、訪問診療は特定の医療機関に集中しており、利用者の65%が高齢者住宅や施設系居住サービス入居者で、自宅居住者への供給は30%でした。このことは、「通院困難な人は多いが、訪問診療を受けられる人は少ない」という構造的ギャップを示唆しています。

現場で発生している問題点
通院困難により、家族・ケアマネジャー・介護職への過剰な負担が発生し、制度化されていない支援が地域医療を支えている側面があります。また、通院中断は慢性疾患の悪化やフレイルの進行を招き、結果として救急搬送や入院増加につながるリスクが高まる恐れがあります。さらに北見地区消防組合のデータによれば、救急出動件数の約10%が高齢者施設からの要請であり、施設での心肺停止(CPA)遭遇率も高い状況です。

今後必要な対策(提案)
今回の報告では、以下の6つの対策を提案しました。


①移動支援を「フレイル対策」として位置づける
移動支援を単なる交通施策ではなく、外出機会を維持しフレイル進行を防ぐための施策として捉える必要があります。
②通い続けられる支援」への転換
「通えなくなった後」の対応に偏りがちな現状から、通院送迎、院内介助、短距離移動支援など、「通い続けられる支援」へ重点を置く必要があります。
③家族介護力依存からの転換
独居高齢者の増加や家族の遠距離化などを考慮し、インフォーマル支援、地域住民の助け合い、有償・無償ボランティアなど多様な支援体制構築が求められます。
④通いの場を地域移動支援基盤として活用する
「以前からの人間関係」が生活継続を支える実態を踏まえ、通いの場やサロンなどを「地域の移動支援基盤」として育成する視点が必要です。
⑤医療・介護・交通分野の横断的連携
各分野が個別に対応している現状を改め、情報共有を通じて「地域で通院・外出を支える体制」を横断的に検討する必要があります。移動支援は、巡回バス、乗合送迎、有償ボランティア、介護タクシー支援、冬季限定支援などを含め、「地域医療維持政策」として再設計すべきです。
⑥外来診療をフレイル発見拠点として活用する
外来は歩行低下、受診忘れ、服薬管理悪化など、フレイル悪化を発見する最前線であるため、早期発見とリハビリテーション・地域支援への連携を強化することで、在宅生活の継続可能性が高まります。このためには、医療機関が「外来受診しやすい体制」を構築することが重要です。

結論
地方都市における通院困難問題は、「地域医療の周辺課題」ではなく、「地域医療の中心課題」として位置づけられるべきであり、在宅医療、救急医療、外来医療、介護現場のすべてに波及するテーマです。今後は、「通えなくなってから支える」のではなく、「通い続けられる地域をつくる」という視点への転換が求められます。

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