身寄りなしの方の支援体制整備を関係者全体の課題へ

令和7年2月26日に北見市が開催した「令和6年度 医療機関・在宅ケアマネジャー連携会議」にて「身寄りなし患者の支援課題について」をテーマとしたグループワークを当センターが担当した。参加者は医療機関の入退院支援担当者と居宅ケアマネジャーである。

そもそも今回、なぜこのテーマにしたのか。これは以下のレポートを読み、非常に危機意識を私が感じたからであった。(以下レポート要旨)

人口減社会は個人を取り巻く地域や世帯・家族の縮小をもたらすばかりでなく、高齢期の暮らしへの影響、特に健康や介護の問題が顕在化して初めて「身近で手助けする人がいない課題」に直面することに気付いたからである。現に身寄りなしで困っている方はもとより、今現在は自分自身で身の回りをことができる方であっても、将来へ向けたの支援体制を整えておかなければならない。私の仕事はこれまで医療と介護の課題を取り扱ってきたけれど、この課題は将来生まれる社会課題として直ちに取り組まなければならないテーマだと感じた。
身近で手助けする人がいない場合、医療機関においては自宅退院への選択の可能性は小さくなる。また護保険サービス契約も怪しくなる。これまで「身近で手助けする人」の存在を前提としてきたサービスの大転換が求められる。

話しを連携会議へ戻します。

連携会議で「身寄りなし患者の支援課題」を協議するにあたり、居宅ケアマネジャーを対象に身寄りのない方の入退院支援に関わる調査を行った。調査にあたり必要なことは身寄りのない方の定義だ。そこで、㈱日本総合研究所が「介護職員等における身寄りのない高齢者等に対する支援の実態に対する調査研究事業(令和6年度 老健事業)」で用いた以下の定義を活用して調査をおこなった。

調査では北見市の居宅ケアマネジャー約200人のうち55人(回答率 27.9%)から回答を得た。調査結果をまとめると以下のことが判明した。

  1. 全ケース1,543ケース数中、身寄りなしの方がいると回答のあったケースは108(6.9%)で、将来の身寄りなしを含めると179ケース(10.9%)となり、要介護ケースの約1割であった。
  2. 要介護ケースにおける単身世帯率は37.0%で、高齢者夫婦世帯は59.0%であった。
  3. 要介護ケースにおける成年後見制度の利用率は14.8%であった。
  4. ケアマネジャーの法定外業務としていつもある(月1回)程度の内容は、郵便・宅配、書類作成の代行や発送であった。
  5. 法定外業務への対応は事業所の業務が無償で実施していた。
  6. 支援が難しい人への支援の際、助けになるのは、併設する事業所や同僚であった。
  7. 入院時に保証人・緊急連絡先等を求められる医療機関が多いとケアマネジャーが回答した。
  8. 身寄りのない方が介護保険サービスを利用できるようするために、必要だと思われることで最も多かったのは「医療機関や施設が保証人がいなくても入院、入所を受け入れてくれること」であった。
  9. 身寄りのない方の支援に対し「大きな負担感がある」と回答したケアマネジャーが約7割いた。

以上の結果から「身近で手助けする人がいない課題」に直面している方は非一定数いることが判明した。
医療機関とケアマネジャーの入退院支援に関する会議ということもあり、話題はケアマネジャーの業務負担をどう解消していくかという課題もあった。これはこれで解決をしていくとして、グループワークを終え「身近で手助けする人がいない課題」の解決へは今後、以下の手順でを進めることが必要だと感じる。

現状と課題の把握
「身近で手助けする人がいない課題」は各機関(行政・医療機関・介護サービス・その他)でどのように発生しているか、またどの程度に人数がいるか。
現在行われている支援
上記の課題を各機関(行政・医療機関・介護サービス・その他)はどのように対処しているか。今後対象者が増加した場合に持続可能かどうか。
今後立案すべき支援や対策
現に「身近で手助けする人がいない課題」に直面している方に対する対策は何か。
どういった団体を構成した協議体(既存の団体を含む)でで検討していくか。
将来の「身近で手助けする人がいない」予備軍の方に対し、現在取り組めることは何か。

また、この課題に取り組んでいる地域同士の情報交換も必要だと感じる。この課題はみなに関係するが、どこが主体的に扱うかが定まっておらす、その結果誰も取り扱わずただ見過ごされてしまう。

今後はこの身寄りのない方が抱える課題を地域全体の課題として各地域で取り組んでいくことが望まれる。

参考資料:身寄りのない高齢者の生活上の多様なニーズ・諸課題等の実態把握調査(日本総合研究所 2024年04月)

専門性の越境は多職種連携の進展につながるか

本稿は2025.2.1に発行した北見市医療・介護連携支援センターのニュースレター第15号に掲載したもの。いままでは医療介護関係者へのインタビューを記事にしていたが、諸般の事情で関が執筆した。これまで読後の感想をいただくことはなかったのだが、今回は色々な方からご意見を頂戴した。さらに意見が欲しいという訳ではないのだが、気をよくしてこちらにも掲載する。

事例検討における職能の専門性と意見・提案
 数年前まで、多職種が集まり事例検討を行う際、私が気になっていたことがありました。それは「医師として」とか「リハビリでは」といった自己の職能を前置きする発言です。もちろん医師でない者が診断や治療をすることはできません。そうではなく、職能を前置きすることで発言を自己擁護しているような態度を感じたのです。しごくもっともな話です。医療機関内で実施するカンファレンスのように、患者さんや利用者の情報をすべて知っているわけでもなく、発言の責任を負う院内の医療チームのメンバーでもありませんから当然です。きっとそれはよく知らない患者さんや利用者に対する「遠慮」のようなものなのかもしれません。多職種が意見をいう場では恐らくこういった遠慮という「配慮」が多職種連携による各職能の知見の効果を狭めたり、もう一歩連携を進めたいのに進まない楔形(くさび)のようなものだと私は感じていたのでしょう。
 そういう意味で多機関の地域関係者が集まる事例検討の場における多職種の発言は、「意見や提案」の扱いであり強制力はありません。であればもう一歩踏み込んで、多様な意見や職能の枠にとらわれない形で事例検討が実施できないものかと考えていました。こういった「意見」は提出された事例を今後展開する上で、新たなそして大きな各職種の「気づき」となり、地域での支援を広げる効果をもたらすでしょう。
 多職種による事例検討という事業の目的は、本人の意欲や強みを引き出し、生活の継続を支えられるような支援に近づけることです。こうした多職種とのやり取りが互いの視点の共有化につながり、連携の目的に近づきます。


共通言語の活用と地域支援の充実
 そこで北見市では令和5年度より地域ケア個別会議(北見市では「自立支援型地域ケア個別会議」と呼称しています)に適切なケアマネジメント手法を活用する運用を開始しました。従来の会議と異なるのは事例提供者の支援内容や多職種による助言や意見を適切なケアマネジメント手法における「基本ケア項目(44項目)」を共通言語として用いて検討することです。
 適切なケアマネジメント手法とは、要介護高齢者本人と家族の生活の継続を支えるために、介護支援専門員の先達たちが培ってきた知見に基づき、想定される支援を体系化し、その必要性や具体化を検討するためのアセスメント、モニタリングの項目を整理したものです。
 会議では最低限の事例紹介ののち、検討したい事項を基本ケア項目に従い事例提供者が説明します。数点の多職種による質問を経て、提供者の提示した基本ケア項目や、追加するべき支援について基本ケア項目が提案されます。
 適切なケアマネジメント手法を活用して効果的だと私が感じたのが、多職種は提案する基本ケア項目の理由「なぜこの支援が必要だと思うのか」を述べるだけで意見や提案が済むことでした。
 従来であれば支援の理由に留まらず、「こういう支援をしてはどうか」という支援内容も説明が必要です。しかし既に基本ケア項目に詳しく記述されているのです。短時間で意見が済めば多くの他の意見や提案を会議で展開することが可能になり、会議の効率化につながります。それだけではなく、年間を通じて基本ケア項目の番号の頻度を調べることにより地域のケアマネジメントの課題も抽出できる副産物となります。
 会議後に事例提供者は各職種から提案された意見と採用した意見のみならず、修正した支援内容と支援結果をA4サイズにまとめ会議運営者である北見市へ提出します。これに匿名性を確保した上で事例集としてまとめ、市内の多職種へ供覧するところまで実施します。これにより、多くの関係者が課題に対する支援のバリエーションを知り、かつ適切なケアマネジメント手法の普及につなげます。
 つまり会議の目的である、①地域におけるケアマネジメントの質の向上、②地域における課題の抽出、③適切なケアマネジメント手法の普及と活用の拡大に資する多職種による取り組みに繋がるようにしています。


薬剤師の発言による多職種連携の可能性
 北海道薬剤師会北見支部による研修会で、ある薬剤師の方の発言が印象に残りました。「これまで薬剤師は薬学的観点や薬剤管理についての助言・指導に留まっていた。これからは介護現場での視点を共有して、ケースに寄り添った気づきを薬剤師として伝える事が必要なのではないか」というものです。在宅医療や在宅ケア領域において多職種が連携する目的は利用者本人や家族の自立支援と生活の質の向上です。指導よりも介護現場での困りごとである、脱水・栄養失調、転倒・誤嚥、認知機能低下、生活不活発、慢性疾患の増悪、家族との関係の介入などに対し、いわば「越境した」気持ちで発言していくことがこれからの多職種連携の姿になると気づいたのです。


 地域の多職種連携では、チームワークモデルの3つの類型のうち、急性期やICUなど医師の指示に基づき、あらかじめ決められた役割をこなす「マルチモデル」ではなく、在宅・地域ケアチームのような、多職種間で役割固定がなく、横断的な支援を行う「トランスモデル」を意識したモデルが関係者に浸透していくような取り組みを今後も進めていきたいと思います。(下記図を参照)

医療・介護資源が減少する地域の取り組み

地元のロータリークラブにお招きいただき、卓話をしました。

ロータリークラブの存在は知っていましたが例会に行くのは初めてです。社会の第一線で活躍している経営者や役員、医者、弁護士、薬剤師、会計士、住職など専門職をされている方が入会していらっしゃいます。また卓話とは、例会の会食後に開催される小演説の事のようでした。

テーマは「人口減少社会における医療と介護の連携と意思決定支援」についてお話しました。内容を以下にご紹介いたします。

  • 北見市の施設等で働く介護職員は令和元年から令和4年の3年間で345人減少した。市内の開業医も高齢化している。
  • 人口減少社会によりこれまでの医療と介護サービスが持続出来なくなる時代が間もなく到来します。どうすればいいのか。
  • 対策は住民自身が健康でかつ介護を受けないでいる自主的な取り組み。その上で医療と介護が協力して過不足のないサービスを提供できる仕組みが求められる。
  • さらに大切なことは、やがて来る自分の「死」に際し、どのような医療・介護サービスを受けたいか自身で考えるとともに、日頃からご家族等と話し合っておくこと。
  • 2040年は団塊の世代が全員90才以上になる年で、日本の死亡者数がピークに達する。
  • 北見市の65才以上人口数はゆっくり減少するが、85才以上人口は、2025年から2040年の15年間で1.4倍に増加する。
  • 85才以上の要介護認定率は57.7%(全国平均)であり、北見市では2030年から介護の需要がさらに数十年続く。
  • 医師、特に訪問診療を実施する医療機関や医師が少ない。開業医も高齢化している。
  • 介護職員が高齢化し、かつ減少している(3年間で350人減少)。
  • 北見市における自宅死や老人ホーム死は、道内他市町に比べ相対的に高い。
  • 要介護認定における要支援(1・2)など、軽度者の悪化率が高い。
  • 高齢医師診療所が複数廃業。病院へ高齢の外来患者が急増。待ち時間を嫌う患者の受診控えが進みその結果、高齢者の救急搬送数が増加する。
  • 救急医療機関は認知症を併存疾患とする入院患者対応を忌避する(現在もですが…)。疾病は治癒しても認知機能低下が進行し、自宅退院困難な患者が医療機関で多く産出されるが退院先がない。
  • 高齢救急患者で救急ベッドが埋まり、集中治療が必要な患者が入院治療できない。
  • 介護支援専門員が不足し、ケアプラン作成が追いつかない。また介護職員不足で施設のベッドに空床はあるが介護職員不足のため、入所できない。
  • 急性期病院から直接自宅退院する認知症・高齢者が増加。介護するヘルパーや家族がおらず、「自宅で一人死」のニュースが毎日流れる。
  • 適切な介護サービスが受けられないので、軽度者(要支援)があっという間に重度化する。
  • 通院できなくなると、医師の診察が受けられない(医療難民:訪問診療を行う医療機関や医師が不足)
  • 自宅や施設で暮らしたいと思っていても暮らせない(介護難民:介護福祉士やケアマネジャーが急激に減少している)
  • 救急で病院運ばれた際、どこまで治療をするか。本人の希望が不明確なため、救急医から短時間で家族が決断を迫られる(人生会議(ACP)の認知度が低い、人生会議は家族のため)
  • 自宅や施設で暮らせないと退院できず、救急病院で新しい救急患者さんの受け入れができない大きな社会問題となる(介護職不足の問題は救急医療の問題とつながり、救急医療が崩壊)
  • 話し相手や友達付き合いを欠かさない(他者との交流)。孤独はタバコより健康に悪い。
  • 定期的な運動を行う(近所の体操教室など)。高齢でも筋力は向上します。
  • 健康な方は、近所の弱ってきた方を助ける。手助けは生きがいにつながるので、自分が将来困った時でも助け合える近所づきあいをしておきも認知症が多少進んでも自宅で暮らし続けられるようにする。
  • どんな暮らしが自分にとって大切なのかを家族で話しておく(推定意思)。急病の時(もしもの時)にどこまでの治療を受けたいか、ご家族が困らないようにしておく。

地域包括支援センターが進める住民主体の通いの場の活動にロータリークラブからも協力をお願いしたい。

高齢期は未経験の出来事の連続。特に高齢期から死後にかけては、自分では行いきれないことが多く発生するため、いかに他者の助けを得られるかが非常に重要なカギを握っている。これまでは親族が近くにいて、必要な時には柔軟な形で助けてくれることが社会的な前提となってきたが、現実にはその前提は崩れつつある。

現在北見市の一部の地域包括支援センターでは「住民主体によるの通いの場」づくりを進めている。行政から押し付けられたプログラムではなく、住民自身が主体的に自分自身の介護予防に取り組むために、近所や地域で身近に人が集う場所をつくり、定期的な体操や交流、困りごとのお手伝いなど小さい単位自主的に実施する地域の活動。

ポイントは他人のためにちょっとずつ自分でできることで協力することだ。ボランティアという感じではなく、「知り合いだからちょっと助けている」という感覚だ。こういった「人の役に立っている」という感覚。

社会の第一線で活躍している経営者や役員などで構成するロータリークラブの皆さんもこの活動を知り、協力して頂けるようになると大きな力なる。地域にはリーダーが必要です。今後「ロータリークラブが地域を救う」という流れになることを期待します。

お招きいただきありがとうございました。

連携当事者と連携調整者

「連携当事者は連携調整者になれない」という話をする。

連携を行う者には、連携当事者と連携調整者の二者が存在する。

住民が地域で安心して暮らす目的のため、医療提供体制や介護事業所が抱える課題解決の活動は「在宅医療介護連携推進事業」と呼ばれ、全国の各地域で精力的な活動が行われている。よくある取り組みの一つに「地域における入退院時の連携ルール」がある。利用者が医療機関へ入院した際にケアマネジャーが医療機関へ情報提供し、退院前に医療機関がケアマネジャーへ連絡をするルールを地域全体で決めようとする取り組みだ。

皆で課題を話し合い、解決方法を検討して実行する。最初のうちは調子よく物事か運ぶがすぐに限界がくる。連携のためのルールを守らない者(機関)が現れるからだ。地域連携とは「地域で協力し合うために皆で守るルール」のことだ。だからルールを皆がいかに守るかがとても重要となる。しかしルールを守らない者にも言い分がある。「そのルールは使いづらい」とか「従う理由が合意できない」などだ。なので話し合いをするのだが、この話し合いが非常に難しい。すべてのルールが誰にとっても使いやすくて満足するものではないからだ。この辺りからメンバーである連携に直接関わる当事者(病院の連携担当者やケアマネジャーなど)―これを「連携当事者」という―だけでは限界がやってくる。

話し合いの決着点、いわば連携の調整とは、互いの言い分を吐き出させ、相互に相手の言いにくいことを受け入れ、妥協点を見つける作業なのだか、これを当事者同士で実施するのは難しい。そこで、これを調整する「連携調整者」の出番となる。連携調整者とは、中立的で、医療と介護の両者から一定の信頼を得ている者が望ましい。行政がその役割を担うのがふさわしい。

医療機関と在宅ケアマネが公平で平等な立場で「互いのできること、できないこと」が組織同士で話し合われる場があり、そこで地域の連携課題が話し合われ、地域の多くの機関が参加しており、ルールが修正されていく。そういう場を維持するには「連携調整者」の存在が不可欠だということを地域のメンバーの皆が認識することが大切だろう。

通院困難者と訪問診療

2020.5.27

令和2年度の当センターの活動予定の一つに「通院困難患者の調査と課題抽出」がある。

これは在宅医療介護連携推進事業における「医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討」にあたる。

疾病を抱えた要介護者の治療継続の一つに通院手段の確保があり、適切な医療を受けるために生活支援たる介護サービスの協力が必要となる。

今年度の具体的な取り組みは、通院困難利用者の実態、訪問診療や通院介助サービス量の需要及び供給量の調査、供給増へ向けた関係者との課題抽出を行う予定だ。

昨年度当センターが居宅介護支援事業所を対象に行った調査では、北見市内で要介護認定を受け訪問診療を受けている利用者は170名いた。また訪問診療が必要となる可能性のある利用者数は220名であった。ちなみにその約半数が「通院介助に身体介護をサービスをつけている」ことであった。なので今年度は通院介助サービス量について詳しい調査と課題を見つけることにした。

訪問診療の対象者を調べる方法として、前述の「通院介助に身体介護をサービスでつけている」や「受診すると(待ち時間などが長くて)2~3日体調が悪くなる」などの該当者を調べると「需要量」が分かる。そうすると訪問診療の現状件数からどのくらい今後の「供給量」を増やせばよいかは引き算できる。例えていうなら今立っている山の位置と、これから登ろうとする山頂との差ということになる。上記の調査結果からは220名の訪問診療の需要があることになる。

理屈は簡単だけれど難しいのが「訪問診療を求める患者数」がイコール「訪問診療をすべき患者数」ではないことだ。

医療と介護の連携の意味の一つは「限られた医療と介護資源が協力し合い地域住民が長く在宅で暮らせるようになる」ことであるから、できるだけ訪問診療を必要しない身体状態が続くことが望ましい。安易に訪問診療を選択できる環境は「限られた医療と介護資源の活用」という視点からは望ましくない場合もある。なぜなら都市部と比べ地方は医師数が少ない。外来診療を訪問診療に切り替えることはその医師の外来診療の時間を削ることになる。在宅医療支援診療所や訪問診療が増えることは望ましいけれど、ただ増やしたとしても地方では医療資源の診療総量が増えない(どころか減少している)ため根本的な解決は難しい。

じゃあどうしたらいいのか。課題の根っこを考えてみた。訪問診療を必要とする患者「像」の関係者間の認識の共有ができていないことではないかと考えた。それは通院診療から訪問診療へ切り替えるべき患者の状態の基準を明らかにすることではなく、通院介助サービス量が不足しているから訪問診療すべきだなど、社会的な理由を訪問診療の理由にすることでもない。

関係者のもつべき認識は基準やコスト評価ではなく「通院困難イコール訪問診療」という呪縛から一旦は離れ、訪問診療以外の通院方法、または通院頻度を下げる方法(オンライン診療)など、なるべく今の生活スタイルを維持するべきだという認識が関係者で一致して個々のケースへ対応していくことのように思えた。

基準やルールづくりなど、地域や医療と介護の連携を推進する事業に取り組む者として耳の痛い結論となった。「急がば回れ」ということか。

(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援」のはき違え

2020.6.8投稿

在宅医療介護連携推進事業で示された事業は8つある。その1つに「(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援」があり、全国で在宅医療・介護連携に関する相談窓口が設置されている。これは医療・介護関係者の連携を支援するコーディネーターを配置し、在宅医療・介護連携取組を支援するというものだ。

この取り組みの実施主体は市町村直営、地域包括支援センター(委託法人)などが殆どだが、一部の自治体では社会福祉法人や医療法人が委託されている。相談の対象は医療・介護関係機関のみの場合もあれば地域住民も含め実施するなど対象もバラバラになっている。

委託されたセンターは相談窓口なので「相談を受けると」いうスタンスで取り組む。そればそうだろう。私もこの一年そのように感じ実施してきた。でもここ最近違う思いを持つようになった。それは在宅医療・介護連携に関する「相談を受ける」のではなく「相談(事)を解決する窓口」だということだ。

介護保険制度ができて20年が経過した。ケアマネジャーの数も増え、質も向上した。医療機関への受診の仕方だとか、どの医療機関が訪問診療を実施しているかなどは、ほぼ既知のこととして、居宅介護支援事業所等の事業所内では共有されている。医療・介護連携が進んでいる地域や小規模の自治体などは医療・介護資源に関する不明点は極めて少ない。ゆえにこの「相談窓口」が役割を発揮することは少ない(と思われる)。

相談が少ないとその地域の在宅医療・介護連携に関する問題も少ないかというと、そうでもない。問題はどちらかというと「問題ないと思っていること」自体が問題だということもある。

特別養護老人ホームへ入所していた利用者が肺炎で救急病院へ入院した。経口摂取が出来ないので経管栄養を導入することになった。肺炎の治療は終了したが、経管栄養はその特養では管理できないので特養退所扱いとなり、医療機関は受け入れ可能な転帰先を探す。

昔からそのような取り扱いをしてきた場合、関係者はこのことに課題や問題を感じるだろうか。

「サル化する世界」(文藝春秋)で内田樹氏は現代日本はサル化していることに警鐘を鳴らす。

先ほどの特養の例えだと、経口摂取困難で経管栄養になった方が救急病院へ入院し、退院や転院が出来ないでいると病院の病床が一杯となり、いつかは肺炎なった入所者がその救急病院から満床で入院を断られるかもしれない、という過去と未来を含んだ視点で「今」を考察できないということを想像できない状態ということになるだろう。

内田は「サル化した人間の特徴は『過去を反省しない』」『未来に対して見通しを持たない』ことです。」という。

このままこの状態が続いたらもっと大きな問題になる。こういう「未来への見通し」を持ち、今は問題となっていなくても未来に問題となる可能性や危機を感じ「現在の問題ないと思われる出来事」を問題と感じることが求められる。

「相談を受ける」のではなく「相談(事)を解決する窓口」というスタンスでいることが在宅医療・介護連携に関する相談窓口の役割なのだと思う。

連携と目的の不可分な関係

最近このblogを閲覧しているとお聞きした方に数人会いました。ところが2024年の春にホームページのサーバーの入れ替えをした際に、以前の投稿がなくなってしまった。改めて古いものになりが、再び投稿することにした。

約16年前、診療報酬で「地域連携パス※(地域連携診療計画管理料)」に大腿部頸部骨折に加え、脳卒中が追加された。

つまり地域連携とは、自分の病院で治療を完結せず、次の段階でのサポートが得意な病院へ患者を移動させ、一つの病院だけではなく、地域の多くの病院があたかも一つの大きな病院のごとく協力し合う仕組みと考えていいだろう。ところで「地域連携」という語はこの辺りから全国で使用されるようになった。しかしこの仕組みが成立するためには、患者の診療基準と診療計画を標準化し、これを引き継ぐ「ルール」を関係機関が守っていることが大前提である。連携とはこのルールを守ることを言うのであり、最近「あの病院とは連携出来ているから紹介できる」といった「知り合い」や「協力」を指して使用ものではないと言える。

医療介護連携の観点からすると、地域にある多様な医療機関と介護事業所のそれぞれが自分達がケアしたい対象者のみを選び、それ以外は関係ないという態度を決め込むというバラバラの方向性ではなく、地域の多くの対象者が困っている「間(はざま)の課題」に気がつき、この課題の解決という同一の目標へ向かってお互いに協力し合うことが医療介護連携である。よく知った相手だから連携しているのではない。両者の間に地域の課題という共通の目標を認識しているかどうかが「連携しているかどうか」の一丁目一番地だ。

そうすると自らの都合だけで事を進められなくなる。連携を進めることは少しずつ相手や対象者の存在によって私達が今までの取り組みから少しずつ「変わっていこと」が必要になる。

このことについて9年前、札幌市介護支援専門員連絡協議会へ述べたものを発見したので多少古いが掲載しておく。

★★★★★★★★

連携とは「変わる」こと

ケアマネSAPPORO 第89号(2014.8.1発行)へ掲載

【入院日数の短縮と在宅医療の推進】

 介護保険制度ができ15年が経った。私が1998年に介護支援専門員試験を受験した当時は「制度あってサービスなし」などと揶揄されたものだ。現在はどうだろう。格段にサービス種類と量が増え、選択肢が増えた。介護支援専門員の皆さんが利用者や家族のニーズを的確に捉え、代弁してきた証だと言える。活動を1999年から開始した貴会の先見性と行動力に感服し、敬意を表する次第である。

 2025年問題とは、高齢化率の増加、社会保障財源の確保と介護サービスの質という三つの要素の組み合わせとバランスをどう決着つけるかの問題である。欠かせないのは、要介護者の生活機能の維持を支える医療とのかかわりだ。医療保険制度も大胆な方策が実施されている。介護支援専門員の方と密接に関係するものは2つある。入院日数の短縮と在宅医療の推進だ。

【入院期間短縮に対応した既成概念の打破】

 入院日数の短縮化とは「早く治して早く退院する」指向だ。急性期では疾患別のクリティカルパス(治療計画書)に基づき、治療手順は標準化されている。つまり「入院時に退院日が決定する」のだ。在院日数が長期化すると医療機関の収入は減少する。医師の胸三寸で治療計画が決められていた時代は過ぎた。今は「診断と治療計画への適応」に主眼が置かれ、あとは予定した計画に対する「実行(Do)」が病院内で粛々と展開される。

 予定通りに治療とその結果が進めば問題はない。しかし相手は高齢者である。入院中に合併症が生じたり、認知機能が低下したりする。高齢者の入院にはリスクが伴う。「早く治して早く退院する」ことを医療機関と介護支援専門員が協力する新しい展開がこれから更に求められる。

 当協会(北海道医療ソーシャルワーカー協会)が2012年に介護支援専門員の皆さんを対象とした調査*1 によると、退院前に医療機関から介護支援専門員へ連絡が無かった割合(退院連絡漏れ率)は全道44%に対し、札幌市では38%であった。数値の高低に関する評価は別にして、これをゼロにしていく取り組みが必要だと個人的には考えている。では連絡が漏れている方々はどんな方なのか。私は「要支援」の方だと思っている。つまり「病院は要支援を見つけられない」のではないかということだ。例えば月間1,000名以上の入退院がある大病院では、連携室の看護師やソーシャルワーカーは要支援者を見つけられない。いや「見つけられない」というより「そこまで手が回らない」という言い方が正確な表現だ。絶対的なマンパワーが足りないのだ。ではどうしたらいいか、足寄町の取り組みがヒントになる。

 足寄町では、二次・三次救急患者は町から65キロ離れた帯広市内へ搬送される。従来、治療は終了しても医療機関との連絡調整が不十分だった。そのため町内の特養待機者は100名を超えていた。ところが平成20年より、足寄町国保病院の連携室や町内の地域包括支援センターから帯広市内の医療機関へ直接訪問し、医療機関の求めに応じ、早期から相談調整を開始した。その結果急性期病院から自宅への直接退院が増加。特養待機者も減少したというのだ。医療機関から早く連絡を受け、町の地域包括支援センターが出張って退院調整に取り組んだ結果である。連携とは「方法の変更」ではなく「既成概念の打破」である。

 医療機関から早くに連絡をもらうにはどうしたらいいか。退院可能な日から逆算して医療機関に出向き、退院調整期間を拡大する仕組みをつくることだ。入院期間の短縮が求められる医療機関に対し、介護支援専門員側から協議を持ちかける絶好の時期が今、到来している。

  医療機関側からの連絡を待つ受動姿勢から能動的に医療機関へ入り込んでいく「変化」が求められるだろう。これに関しては貴会と共に、当協会も積極的に医療機関からの早期の連絡、連絡漏れゼロを目指した活動をしたいと考える。

【在宅医療の推進と越境する専門性】

 退院調整と並び重要なのが在宅医療の推進だ。こちらは入院治療と異なり、日常的な高齢者特有の疾患に予防的に対応することが求められる。対象疾患は尿路感染症、肺炎や脱水などだ。在宅医療は急性疾患に対する治療より、健康状態を長く続けるための予防的対応に尽きる。よく聞く悩みは訪問診療医がいないとか、在宅を理解してくれる医師が少ないなどだ。しかし在宅医療は医師だけが主だとは思わない。確かに医師は在宅医療の要であるが、何もかにも医師へ相談したら医師の身がもたない。私は訪問看護師と薬剤師の知識と技術を大いに活用すべきだと思う。

 私達の地区(北見市)では昨年、介護支援専門員の方を対象に「ケアプランに活かせる使える医療情報講座」*2 を開講した。医師、薬剤師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカーらを講師に、医療機関から提供される医療情報を効果的にケアプランへ活用することを目的とした研修会である。特に介護支援専門員の方に好評だったのは「薬に関する相談を調剤薬局へしてもいいことが分かった」であった。剤形の見直しや薬の影響による心身機能の変化を医師に相談する前に調剤薬局の薬剤師に相談できること、相談方法も伝授した。「(薬剤師は)今後相談しやすい社会資源として活用できる」と好評であった。訪問看護師の講義後のアンケートでは「看護師や医療職が見るフィジカルポイント、医療職が知りたい情報、伝える方法のポイントを私達が知ることは有効だ、何を見ればいいか分かった」と好評であった。連携とは「役割の分担」ではなく「越境する専門性」である

【おわりに】

医療と介護の連携が重要と言われる。何故連携が重要と言われるのか。それは人口減少と高齢化が進み、国の財源が不足するなかで、限りある医療介護資源を最大限活用しつくすことが絶対必要だからだ。そのためには今までの方法では通用しないことを自覚すべきだと思う。制度が求めているのは、接点の乏しかった他職種(医療職)と協働した結果、医療介護分野の費用対効果が高まることだ。介護支援専門員がさらに重要な位置づけを獲得するためにはこの医療職との協働への努力が必要だ。どうすればよいのか。まず病院のソーシャルワーカーが地域との窓口となり、介護支援専門員と協力して早期の退院支援を行うことだ。

  次に介護支援専門員はケアプラン作成過程で避けていた医療面の問題について「どこから分からないか」を見定めることだと思う。連携とは自分から積極的に「変わる」ことだから。

*1「退院時連絡(医療機関から介護支援専門員へ)調査」第一報  (北海道医療ソーシャルワーカー協会 HP より)

*2「ケアプランに活かせる使える医療情報講座」 (北見市医療福祉情報連携協議会 HP より)

http://www.kitamaru.net/

掲載はこちら

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在宅医療・介護連携コーディネートの進め方

介護新聞連載の第14回です。在宅医療・介護連携推進事業におけるコーディネーターの関わりその3、在宅医療・介護連携コーディネートの進め方です。
いよいよ連載も最終回です。今回は在宅医療・介護連携推進事業のコーディネーターとしてどのように事業を進めるとよいかについてお話しします。在宅医療・介護連携推進事業の手引きにも同様のことが記載されていますが、より現場感のある方法をご紹介します。コツは「感染者を増やせ」です。紹介する図の手順でご紹介します。

【地域の困りごとに気づく】
まずいわゆる地域の課題の発見と活動を選択する作業です。コーディネーターとして何に取り組んだらよいか分からないという方はほとんどいないでしょう。何かしらの「これは問題だなぁ」といった課題をお持ちだと思います。例えば「疾病の悪化で入退院を繰り返している人がいる」心不全、脱水や転倒を繰り返している人などです。また医療機関を退院した患者さん。自宅へ帰り「やれやれ」とばかりにソファーで横になってばかり。廃用症候群が進みADLが低下した際に、もきちんとリハビリして回復させてくれる場所少ないとか、認知症でBPSDが強くなった方をケアしてくれる場所がない(少ない)などがあるでしょう。さらに地方ではあるあるですが、都市部の病院へ入院すると地元へ帰ってこない方が一定数います。こういった「地域の困りごと」のことです。注意するべきは既にこの連載の第12回目「在宅医療・介護連携推進事業におけるコーディネーターの関わり」で述べましたが、「関係者の困りごと」にならぬように注意が必要です。さて、この気づきはご自分だけが感じているのでしょうか。他の方も感じているかどうか、是非話し合いをしてみて下さい。研修会や会議、アンケート調査を実施してもいいでしょう。地域の関係者が感じている困りごとを広く集めてみて下さい。

【困りごとがホントかどうかを確かめる】
次に感じた困りごとがホントかどうかを確かめます。関係する方へ聞き取りをしてもいいですし、調査を実施してもいいでしょう。前項の「地域の困りごと」から例を挙げましょう。心不全のステージ C (器質性心疾患あり、症状あり)の再入院患者数を調べる。そのほかでは、要介護認定の悪化者数とその方のリハビリサービスの有無を調べたり、都市部へ入院した患者さんが地元へ退院してきているかを調べるのがいいでしょう。つまり、コーディネーターの感覚や経験的な「地域の困りごと」がホントかどうかを確かめるのです。調べることで困りごとの程度を数字で表すことができますし、活動を進めていくなかで活動の成果としても評価、確認することができます。活動を測れるようにすることが活動を停滞させず、仲間の動機づけを維持する上で重要です。私は「Googleフォーム」をよく活用しています。メールで対象者へ調査用のURLを一斉送信できますし、回答も表計算のシートが自動的に集計できます。なにより無料なのが魅力です。調査を実施したら集計です。さて、困りごとはホントでしたでしょうか。調査前に立てた仮説の通りでなかったとしても大丈夫です。その調査で分かるのは困りごとの程度ですので、あまり深刻でない場合は焦らず取り組んでもいいテーマですので安心してください。集計後は分析を行い、困りごとの程度と困っている人の大まかな人数、つまり「量」を把握します。仲間でこの分析と対応方法を計画してみて下さい。この段階はまだまだPDCAの「P」の入口に過ぎません。

【困りごとを皆に知らせて感染させる】
さていよいよ取り組みの開始です。今回ご紹介する手順のうちの最も重要な段階です。調べた結果をまとめ、医療介護関係者が集まる場所を設定し、報告するのです。報告のあと「ほっておいていいのでしょうか」というメッセージを投げかけるとともに「このままだと大変」と参加者が思ってくれることが肝です。調査結果で具体的な数字や量が示せると参加者の納得度が高まります。報告のあとも重要です。事前に準備していた「とりあえずの解決策」を提案して参加者から意見を聞くのです。「こんな方法がありますが、他にもあるでしょうか是非教えてください」というスタンスです。課題が明確で、対象者の量が具体的ですので、参加者も解決方法の意見を多く教えてくれるでしょう。私の連携の師匠は「活動テーマを自分事として感じ、協力者をどのくらい増やせるかだ」とおっしゃっていました。つまり「活動に協力する感染者を増やす」のです。その後、協議の結果出された意見を「皆の意見が反映された解決策」として実施することを宣言します。コーディネーターは市町村等でその役割を与えられている方ですので宣言する「資格」があります。この時に単にコーディネーターの宣言に留まらず、市町村(行政)としても宣言してもらえると活動に公的な裏付けが与えられます。北見市は必ずそのようにしています。行政が宣言する意義は極めて高いのです。会の最後には「解決へ向けた取り組み」に協力してくれるメンバーを募ります。この場合、感染者(熱意のある人)が応募してきます。ところで、ある研修会で参加者から「熱意のない人をどう巻き込むか」という質問を頂きました。私の回答は、熱意のない人は機会を狙い「助けてもらう」です。このスタンスでゆっくりじわじわ多くの人を巻き込みます。この段階でやっとPDCAの「P」が終わります。

【皆の意見が反映された解決策を実施する】
ここまで来ると私の感覚では取り組みの8割が終わりです。タイトルの通り、あとは皆の意見が反映された解決策を粛々と実施します。前の例で考えてみましょう。心不全の悪化で入退院を繰り返している人がいるという課題に対する解決策の手順例です。まず、ケアマネジャーを対象に心不全患者の再入院数(割合)を調べます。要介護者しか対象にできませんが、手っ取り早く調べられます。次にその結果を基に、医療機関に対し再入院の原因、理由を確認する会議やヒアリングを実施してはどうでしょう。心不全患者の再入院防止は医療機関にとっても課題意識と関心の高い出来事です。きっと協力してくれるでしょう。その上で、ケアマネジャーに対し、再入院を防ぐコツを伝える研修会を医療機関と共同で企画、実施してはどうでしょうか。内容としては、医療関係者より心不全の病態、再入院原因の紹介や再入院防止のケアプランが上手なケアマネジャーの取り組みを紹介します。また、病態変化の際に相談できる医療機関の相談ルールを医療機関と協議し、ケアマネジャーへ周知するというのはどうでしょう。ここは地域の事情に応じたやり方がいろいろあります。重要なのは感染者を広げ、皆で何とかしなければならないといったムーブメントを作りだすコーディネーターの黒子としての活動です。この段階がPDCAの「D」にあたります。

【解決へ向けた取り組みをメンテンナスする】
さて、活動を進めていくと時間の経過とともに感染者も少しずつ熱い思いが沈静化していきます。これは避けられません。活動を維持していくためにはメンテナンスが必要です。まずしなければならないのが、定期的に「解決へ向けた取り組み」の経過を多くの関係者へ報告することです。本連載の第4回目「地域全体で取り組む入退院連絡ルールづくり」で紹介しましたが、北見市では入退院連絡調査を毎年実施して、連絡率の高低を確認するとともに入退院連絡のルール変更の必要性を協議しています。この活動例でいくと、心不全患者の再入院数(割合)でしょう。毎年の調査で、例えば単身の心不全患者さんの再入院率が極めて高かったとします。思い当たる原因や傾向について、ケアマネジャーや医療機関の担当者と協議するのはどうでしょう。こういった取り組みの修正や変更について意見を聞き、微調整を行う作業がメンテナンスにあたります。PDCAの「C」にあたります。前年度に比べ、再入院率はどのように変化したかなどをチェックすることで活動が進展している実感をメンバーに持って頂くことができます。

【解決へ向けた取り組みをPDCAにこじつける】
以上の繰り返しを実施していく訳ですが、コーディネーターを悩ますことがあります。そう在宅医療・介護連携推進事業の手引きではPDCAサイクルで取り組めという「指令」がありました。でもご安心ください。今回私が紹介した手順を踏めばすぐに書くことが可能です。但し、活動の開始時点ですべてのサイクルを記述することはできません。なぜならこの手順は仲間とともに協議しながら進めていくので、スタートの段階ではすべて見通した上では始められないのです。でも大丈夫です。最初の年は難しくても2年目の活動からはしっかり書くことができます。最初の年は「とりあえずの計画」でいいのです。かといってくれぐれも「とりあえず」とは書かないでくださいね。

【まとめ】
いかがでしたでしょうか。仲間を感染させ、協議しながら修正する。協議する過程は「仲間づくり」にもなっていくのです。活動計画の最初は「とりあえず」ですが、取り組んだ経過を後からでよいのでPDCAにあてはめてみると形になります。こじつけ上等です。翌年度からは恰好つきますのでご安心ください。まずは「仮のPlan」と「仮のDo」で始めてみましょう。取り組むうちに「仮」がなくなります。

最後にコーディネーターとしての私の実感をお伝えして14回の連載を終えたいと思います。在宅医療と介護のうち、優先度の高いのが医療よりも「介護」です。利用者の暮らしを維持するために生活サービスである介護サービスを維持することが最も重要です。他者の手助けを必要とする方が在宅で暮らせる方法を考えることが第一です。在宅介護(在宅生活者)のないところに在宅医療はありえないからです。各地で旺盛な医療介護連携が進むことを願います。短い期間でしたが、連載をお読み頂きありがとうございました。お問い合わせは当センターのホームページに記載のメールアドレスからお願いいたします。

北極星を眺めつつ電信柱を立てる

在宅医療・介護連携推進事業におけるコーディネーターの関わり、第2回目です。今回は「北極星を眺めつつ電信柱を立てる」です。先回りして結論を言うと、地域包括ケアの実現という北極星を眺めつつ、在宅看取りを希望する人数を把握するといった「電信柱」をいっぱい立てて活動を具体化しましょうというお話しです。

【北極星と電信柱】

私がコーディネーターとして大切にしている考え方があります。それは神田橋條治さんという方が「精神科診断面接のコツ(追補)」という著書で、夢(北極星)と目標(電信柱)の関係について書かれたものです。少し長い引用ですがお許しください。

在宅医療・介護連携推進事業にかかわらず、何かを計画して実行する活動における夢と目標についての関係が書かれています。私たちは地域包括ケアという決してたどり着くことのできない「北極星」へたどり着こうとして疲れ果てていないでしょうか。20階のビルに一気に駆け上がる活動計画を立てていないでしょうか。神田橋先生は「歩いているときの電信柱」でよいとおっしゃっています。

【電信柱の立て方】

コーディネーター活動のコツは地域課題を操作定義して目標を達成する記述にすることと前回お話ししました。これは「電信柱」のことです。今回はその電信柱を見える場所に順番に置いてみようという提案です。例として「本人の希望するところで看取りができる」で考えてみましょう。(図1)

まずは現在の在宅看取り数の把握が必要です。活動を進めるにあたっての出発点となります。自宅で亡くなっているのか、または特別養護老人ホームや自宅ではない在宅(サ高住)なのかを把握するでしょう。次に在宅看取りを希望していても叶わない方がいます。施設等での看取りであっても、医師の訪問診療が受けられないために、急変して救急車を要請していることなどがあるからです。そういった小さな数を把握する方法を順番に積み上げていくのです。その一方で在宅看取りを選択肢として持てるということを住民含め、医療・介護関係者が知ることが必要になります。いわば地域におけるACPの推進です。第9回と第10回目でお話ししましたが、特別養護老人ホーム入所時に認知症が進行して入所後に施設における意思決定支援が進まないという現状などがあり、入所前の在宅生活時からのACPの取り組みも進めることが必要です。電信柱は無数にとまでは言いませんが、柱の間隔を小さくすると数多く立てることが可能となります。どんな電信柱を立てるか、数は幾つ必要か、順序はどのようにするか、どのくらいの期間で隣町(次の段階)かなど、こういったことを地域の多くの協議体で検討していくのがいいでしょう。「北極星」という決してたどり着かない目的に対し、目の前にあって到達したことが分かるもの、この「電信柱」こそ私たちが取り組むものとなります。こんなイメージです。(図2)

【問いの立て方を「逆さま」にしてみる】

もう一つ紹介しましょう。多くのコーディネーターを悩ますのが「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続ける」という命題です。問いを逆さまにすると「住み慣れた地域で暮らし続けられていない人はいるか」という表現になります。また「地域の目指すべき姿とは何か」という問いの場合は「最低限この地域でこれがないとまずいものは何か」になるでしょう。漠然とした課題を逆側から見て問い直すという作戦です。この問いを展開する例をご紹介しましょう。まず、この地域で最低限これがないとまずいものは何かの例として「医師の診療が受けられること」を考えてみましょう。本連載の第8回目で「医療介護連携における通院困難者の課題解決を考える」をお話ししましたが、まさにこの取り組みです。まずは、医師の診療が受けられない人はいるのか(対象)を把握します。ひっそり施設へ入所していたり、転居していたりする方がいるでしょう。次にどのくらいの人数がいるのかの量を把握します。また医師の診療が受けられない人はどこでどうやって暮らしているのかも気になります。恐らくご家族や知人の助けで「何とか通院」しているのでしょう。その上で、今後、同様の人は増えそうか (見込み、人口動態)や、どうやるとこれらが把握できるか(調査方法)が挙げられます。次に、暮らせていない人は実際にいるのかどうか(我々だけの印象なのかどうか)。さらに「ギリギリ暮らせている人」はどう暮らしているか実例を調べたうえで、どのくらいの人数がいるのかの量を調査します。その上で、暮らせていない理由(資源量や構造)は何か。どうやるとこのことが把握できるか(調査方法)などが考えられます。

いかがでしょうか。要は課題をそのまま眺めるのではなく、手にとって四方八方眺めたり、こねくり回してみるのです。コーディネーターは課題を「誰よりも斜めに見る力」が求められていますが、こういった方法も是非取り入れてみて下さい。

参考文献

『精神科診断面接のコツ(追補)』 神田橋 條治著 岩崎学術出版社、1984年(追補版1994年)

ケア目標の共有が医療・介護連携の出発点

介護新聞連載の第1回です。
この度北海道医療新聞社が発行する「介護新聞」の連載をすることになりました。
忘備録として、このブログでも紹介したいと思います。

北見市で在宅医療・介護連携推進事業を受託している関と申します。このコーナーでは医療介護連携のコーディネーターとして活動して感じたことや取り組みを紹介していきます。第1回目は「ケア目標の共有が医療・介護連携の出発点」です。連携には協力し合う目的が不可欠であり、目的達成のために互いに協力しあうことが必要だというお話しをします。

【地域包括ケアとは現状をなるべく維持していくこと】
私が在宅医療・介護連携推進事業を担当する以前から「連携の師匠」と呼ぶ方がいます。彼が言いました。「地域包括ケアとは、今とは違う何か新しいパラダイスや桃源郷を目指すイメージで語られているがそうではない。現状をなんとかして維持していくことだ。」目からウロコが落ちました。地域包括ケアの目標は障害や介護を必要とする状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けられること。地域包括ケアが実現したあかつきの状態とは、医療機関とケアマネジャーが密接に協力し合う。サービス調整に困ることがない。必要なリハビリテーションが受けられる。多職種間の連携が進み、介護状態が悪くなりにくい地域が誕生する。こんな風に私は思っていました。今とは違う地域の様子です。しかし現実的に考えると、これは極めて実現可能性の低い出来事であることに気づきます。夢見るという意味でパラダイスです。生産年齢人口の減少と85才以上の高齢者の増加で、現状ですら不足している介護サービスは益々不足し、対象者は増加します。地域包括ケアとは、まだ見ぬパラダイスという夢を目指すのではなく、今あるサービス量をなんとか維持していく工夫と知恵を現実的に考え抜くということでした。

【軽度者の介護は住民に任せ、中重度者の介護は介護職が担う】
この師匠を昨年北見市へお呼びし、地域支援事業の担当者を対象に研修会を開催しました。テーマは「総合事業の深い活用法-ケアマネ・在宅介護職不足の軽減のために-」です。研修会では大阪府のとある市の総合事業を紹介して頂きました。とりわけ住民主体の体操教室や生活支援サービスを推進する取り組みです。その市の狙いはこうでした。「軽度者(要支援から要介護2まで)の介護は住民に任せ、中重度者の介護はプロである介護職が担う。その分だけ不足する介護職でも多くの中重度者を介護する。」という戦略です。人口12万人の大阪のその市では、住民主体の体操教室は実に250ヶ所以上あり、毎週開催され、そのすべてが住民により主体的に運営されていました。元気な住民は認定こそ受けていないものの要介護(と思われる)住民を体操教室へ連れ出し、その傍らゴミ出しも手伝うなどの住民主体の生活支援サービスが盛んに行われています。しかも移送は自治体の補助のある住民ボランティアの完全送迎付きです。軽度者の介護は住民に任せる。まさに「今あるサービス量をなんとか維持していく工夫と知恵」でした。在宅の介護職、ケアマネジャー不足を解消する方法は二つあります。彼らを増やすという方法と、増えなくても、少ない職員で何とかやりくりするという方法です。現実的には後者の方法しかありませんが、前者の解決(介護職の増員)にこだわっている地域が多いのではないでしょうか。要介護認定率は多くの市町で20%前後であることを考えると、残りの80%の元気な高齢者を活用する知恵は、決してコロンブスの卵ではありません。将来の地域課題をリアルに受け止め、取り組む決断の賜物だといえるでしょう。

【要支援者の予後予測を基にした介護予防ケアプラン支援】
北見市の要介護認定更新結果から驚くべきことが分かりました。令和4年度に要介護認定を更新した方のうち、要支援者の約54%が以前の認定結果から悪化していたのです。疾病の悪化、配偶者の死別、居住環境の変化など原因は多岐に渡るでしょう。その原因の一つは身体機能を維持するために必要な活動量が確保されず、廃用症候群が進行したのではないかというのが私の推察です。要支援認定された方は認定を受けた現在の身体状態でケアマネジャーの前に現れます。多くのケアマネジャーは認定以前の過去の生活の様子を把握します。しかし「将来どの程度まで認定前の元気な身体状態に戻れるのか。そのためにどの程度の活動量が必要か、またどんな運動方法が適切か。」といった未来の達成可能なADLを予測し、その方法を考えるのは困難です。訪問リハビリを利用しない前提でケアマネジャーが気軽に理学療法士などのリハビリテーション職へ相談する機会はほぼありません。また札幌市を中心とした都市部ではリハビリテーション職が潤沢に働いていますが、人口1万人以下の地方の町村ではあまり働いていません。介護予防といいながら従来型の通所介護へ通っているのが現状ではないでしょうか。その結果、充分な活動量が確保されず、改善の伸びしろの大きい要支援者が重度化してしまうことは問題です。リハビリ専門職の大いなる活用が望まれるとともに、ケアプラン立案の際にケアマネジャーが相談できる仕組みが求められます。北見市では令和4年度に北海道理学療法士会道東支部の協力を得て、「リハビリテーション前置による重度化予防ケアプラン支援事業(略称:リハ前置ケアプラン支援事業)」(図1、図2)を実施しました。

これはケアマネジャーと理学療法士が書面を通じ、利用者の予後予測と機能訓練の方法と評価をアセスメントの前段階(リハビリ前置)で助言を受ける仕組みです。活動の結果、ケアマネジャーから「自信をもって利用者へ説明できた」、「利用者の身体機能改善を利用者とともに確認することができた」などの意見が聞かれました。最も我々が注目した結果は「利用者との信頼関係が高まった」というケアマネジャーからの意見です。ケアマネジャーが利用者とともに同じ目標を立て、モニタリングを行い、利用者とともに結果を評価するという過程を通じ、より両者の信頼関係を高めることが確認されました。

【目的や目標を共有しない「連携」はない】
やっと今回のテーマにたどり着きました。連携とは「二人以上の主体が同じ目的を持ち、互いに協力し合うこと(広辞苑)」です。相手の組織を訪れて「これから連携しましょう」と言う際の連携は「協力しましょう」という意味の「連係」であり「連携」とは似て異なります(連係プレーなどとも言いますね)。つまり連携を実行する際は必ず協力し合う目的が存在します。認知症があり、一人暮らしは難しい利用者がいたとします。利用者本人の強い希望が「施設に入らず出来るだけ長く自宅で暮らしたい」場合、これがこの利用者の支援の共通目的となります。長く自宅で暮らすことを維持するため、多職種間で互いに何をどう行い、どんな協力を実施するかというケアやリハビリテーションの方法と役割を明確にしていく作業が「連携」と言えるでしょう。ここでいう目標とはケア目標に他なりません。在宅で生活する要介護者のケア目標の主たる柱がケアマネジャーの立案するケアプランです。これを補強していくケア計画が通所介護計画や、訪問看護計画と言えるでしょう。そこで重要となるのがケア目標です。しかしこのケア目標の立案が実はまた一苦労です。この目標設定があいまいだと連携もあやふやなものになります。次回はこのケア目標立案のための取り組みについてご紹介します。