地域でつなぐACP推進事業 -入院を起点とした継続的対話モデル- への期待

意思決定は、なぜリセットされてしまうのか

在宅医療連携の現場に関わる中で、ずっと感じていることがあります。それは、「意思決定がつながっていない」ということです。

入院するたび、退院するたび、そして急変のたびに、その都度、「どうしますか」と問い直されています。

もちろん、その問いは必要です。
しかし本来、本人の意思や価値観は、その都度“作り直されるもの”ではなく、時間をかけて積み重なっていくものです。

これまでACPが地域で取り組めるよう取り組んできました。一定数の医療職の方やケアマネジャーは既に実践しています。
しかし多くの現状では、医療と介護の場面ごとにその対話が分断され、結果として意思決定が「リセット」されてしまっているのです。
ここに、地域としての大きな課題があると考えています。

入院という「これからを振り返る機会」を活かす

これまでACPは、「いつ始めるかが難しい」と言われてきました。
ケアマネジャーの皆さんは、「ACPの取り組みの必要性は理解できるが、平時(病状の安定期)に利用者へACPを持ち掛けることはタイミングとして難しい、きっかけが必要」という声が多く聞かれました。
確かに、日常の安定した生活の中で切り出すのは容易ではありません。

一方で、入院した場合はどうでしょうか。
患者・家族にとって、今後の生活や医療のあり方を考えざるを得ないタイミングであり、医療者が自然に関わることができる場面でもあります。

そこで、入院を「起点」にしてはどうかと考えたのです。

大きなことをする必要はありません。「これから大切にしたいことは何ですか」
その一言を問いかけ、一行だけ記録に残す。

その小さな対話が、退院後の在宅療養につながり、再入院時にまた引き継がれていく。

「決める」から「育てる」へ

意思決定とは、一度決めて終わるものではなく、状況に応じて変化しながら“育っていくもの”、“変わっていくもの”です。

医療の場面だけで完結させるのではなく、在宅、施設、そして再入院と、地域全体で対話をつないでいく。

その仕組みを整えることが、これからの在宅医療に求められているのではないでしょうか。

迷わない地域とは何か

「迷わない地域」と聞くと、迷いが存在しない状態を想像しがちです。
しかし実際には、医療において迷いがなくなることはありません。
重要なのは、その迷いを“個人に背負わせない”ことです。

地域の中で支え合いながら、迷いながら意思決定ができる状態、それこそが「迷わない地域」なのだと思います。

今回取り組もうとしている「地域でつなぐACP推進事業 -入院を起点とした継続的対話モデル-」は、決して新しい仕組みを一から作るものではありません。

今ある医療と介護の間に、「対話をつなぐ流れ」を取り戻す取り組みです。

まずは無理のない形で、小さく始める。
その積み重ねが、地域の医療・介護文化をつくっていく。

そのような視点で、関係機関の皆様と共に検討を進めていければと考えています。

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