在宅医療に必要な連携を担う拠点の指定にあたって思うこと

令和7年8月より、北海道から「北見在宅医療圏連携拠点センター」の指定を受けた。

北見在宅医療圏連携拠点センターとは

在宅医療における必要な医療機能の確保・強化に向け、市町村が実施する在宅医療・介護連携推進事業の取組と連携しながら包括的かつ継続的な在宅医療の提供体制を構築するための連携調整を担う。北海道医療計画において「在宅医療に必要な連携を担う拠点」として指定を受け活動する。

在宅医療・介護連携推進事業との違い

北見在宅医療圏連携拠点センターは、これまで北見市から受託していた在宅医療・介護連携推進事業と似たような取り組みだ。異なるのはこれまで北見市内を活動範囲としていたものが、北見市を含む近隣4町(美幌町、津別町、訓子府町、置戸町)を範囲とし、かつ「在宅医療の推進」に限定するということだ。

また、これまでの在宅医療・介護連携推進事業は「委託」だったが、今回は「指定」となる。調べてみると指定とは「行政行為(行政処分)」のようだ。一方で委託は「契約」となる。行政法総論上の違いは私にはあまり分からない。

活動をはじめるにあたり、思うことを書いておく。

自治体ごとの「望ましい在宅医療」の抽出が肝

これまでは北見市のことのみについて活動してきた。今後はこれに加え近隣4町(美幌町、津別町、訓子府町、置戸町)が活動範囲となる。各町で医療資源の多寡がある中、それぞれの町にとって「望ましい在宅医療のあり方」を定めていく取り組みが最も重要だと思う。なぜならこれから医療資源を増やしていくことは難しい。とすれば各町で最低限どんな在宅医療がどの程度あればよいかということになるだろう。幸いに高度な医療や救急医療は北見市にある。遠くても小一時間あればたどり着く。

ポイントは日常の療養生活という身近な場所でのちょっとした身体の不調の際、受けられる医療の程度のことだ。青天井に在宅医療の拡大は求められない。資源には限界があるのだから、過不足のないレベルにできるだけ落ち着けるという現実に即した活動が求められる。ロケットを飛ばすのではなく着陸地点を定め、航続できる燃料を用い、最短に近い航路を選択することが重要だと思う。

在宅医療とかかりつけ医の浸透

「望ましい在宅医療のあり方」とは単に医療レベルや医療資源の多寡の話しだけではない。何かあった際に専門医療が必要かどうかを見極めてくれる「かかりつけ医」を住民が確保しておくということになるだろう。

私がもう20年近く通う理容室がある。そこのご主人は持病のため近隣のクリニックへ通院している。話しを聞くと主治医は投薬の必要はないと言ったが、ご主人はこれを固辞して通院し続けているという。わけを聞くと、今後何かあった時のための「転んだ時の杖」だという。ことわざの使い方は間違っているが、「備えあれば憂いなし」に近い。言いえて妙だ。

またこんな例を知り合いの医師から聞いた。脳卒中を患い地域の基幹病院で治療を受け、無事退院した。退院後は地元の医療機関を紹介され通院していた。年1回再発予防のチェックのため、入院した基幹病院で画像検査を受けている。ある日体調不良のため救急車を呼んだがかかりつけの医療機関では搬送を断られ、基幹病院へ搬送された。診断の結果問題はなかったが数日経過観察のため基幹病院へ入院したという。かかりつけの医療機関を非難するつもりはないが、まずはかかりつけの医療機関が診療を実施するべきだろう。何でもかんでも地域の基幹病院へ皆が受診していたら救急医療の資源が不足してしまう。住民自身がかかりつけ医をしっかり持ち、その役割を使い分けるリテラシーが求められる。

縮小社会における医療機関同士の役割分担の明確化

医療機関同士の役割分担とは患者さんの疾病状況に応じ診療機能を分担するということだ。まず診療所や介護施設を支援する病院を拠点としたネットワーク化が必要となる。今後、北見在宅医療圏域の人口は減少する。65才以上人口も同様だ。しかし85才以上人口は北見市でいうと向こう15年間で1.4倍増加する。日本人の平均寿命を超えた年齢層だ。こういった方々に対する医療はただ「治す」に留まらない。「治し支える」という役割が求められる。単なる肺炎で数日臥床しただけで高齢者の身体機能は容易に低下する。肺炎は治ったもののふらつくようになったら本末転倒だ。

次号へ続く