在宅医療介護連携推進事業のリーダーシップ

平成28年1月、厚生労働省老健局長より「『地域支援事業の実施について』の一部改正について」が発出された。改定のポイントは「在宅医療と介護の連携」という「医療」の記述が初めて介護保険事業へ組み込まれたことだ。これは在宅医療を支援メニューへ取り込むという介護保険制度のみによる支援の限界を認めたことでもあり、また総体としての社会保険給付のコントロールを宣言したと読むことが出来る。 これを受け平成27年度より全国の市町村で「在宅医療介護連携推進事業」が開始されている。

ここである問題が起きている。従来、医療機関を所轄していたのは都道府県等が管轄する保健所だったため、多くの市町村は医療機関を所轄する部署を持っていなかった。そういった中で地域では既に民間有志レベルで多職種の活動が多くの地域で展開されていたため、積極的に行政がリーダーシップをとって事業を進めているケースは当時あまり見られなかった。

この中で北見市では在宅医療介護連携推進事業が開始された平成27年度より、行政が指導的立場となり、医療機関に入退院する際のケアマネジャーとの連絡ルールを組織レベルで協議を重ねた。現在は全国どこの地域でもやっている「入退院連絡ルール」を平成28年10月より開始した。この取り組みの経過とソーシャルワーカーのコミットについて私が報告したものがあったので以下に抄録を掲載しておく。

北見市主導による病院ケアマネ連携の取り組み

[北海道福祉4団体実践交流会 (平成28年11月5日開催) 実践報告]

【はじめに】
 平成27年度より全国の市町村で「在宅医療介護連携推進事業」が開始された。医療と介護を必要とする高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるよう、地域の医療・介護の関係機関が連携し、包括的かつ継続的に在宅医療・介護を提供する事業である。都道府県・保健所の支援の下、市区町村が中心となり、地域の医師会等と緊密に連携し、関係機関の連携体制を構築するのだが、市町村によって活動にムラがあるのが現状である。
 この度演者の勤務する地区において、行政が指導的立場となり、医療機関に入退院する際のケアマネジャーとの連絡ルールを組織レベルで協議し、平成28年10月より開始したので報告する。

【目  的】
 平成26年8月に北見市が実施した「入退院連絡調査」によると、介護保険サービス利用者が医療機関へ入院した際に利用者の生活状況をケアマネジャーが医療機関へ連絡している割合は49%であった(N=412)。また退院前に医療機関がケアマネジャーへ退院の連絡をしている割合は63%であった。この連絡率の向上及び地域全体の連絡ルールの徹底を図ることを目的として取り組んだ。

【方  法】
 まず、北見市が市内の全ケアマネジャーを招集。医療機関との連絡ルールの協議を開始したい旨を呼びかけた。協議のため代表者を立候補及び推薦にて選出した。
 次に、市内の17の医療機関を対象とした研修会を実施。連絡なし退院の在宅での悲惨な事例を紹介するとともに、平成26年に実施した医療機関別の連絡率調査結果を発表(医療機関名は特定できないようにした)。ケアマネジャーのネットワークが発足したことを伝え、ケアマネジャーネットワークとの連絡ルール協議の必要性を伝えると伴に、病院組織として協議への参画を決定するよう求めた。
 その後、医療機関の入退院に関するルールについて双方で協議した。

①入退院連絡の時期、②双方の連絡窓口、③連絡を必要とする対象者の基準。④連絡が欲しい情報などである。

協議の手順は医療機関だけのグループとケアマネジャーだけのグループで意見を集約したのち、双方が意見交換の会議を行い実施可能な方法について協議した。特筆すべき方法は以下のことである。

①ケアマネジャーの代表者は医療機関との協議の際の代表だが、医療機関との協議での報告や検討事項については全ケアマネジャーを招集して検討を行い「全ケアマネジャーで協議する」という過程を踏んだこと。
②医療機関の担当者は連携室等のMSWだけでなく、各医療機関の看護部の責任者も参集範囲として、医療機関全体で取り組むべき事柄であることを認識してもらったこと。
③行政が医療機関との連絡ルール実施を実現したいという強い態度を関係者へ示し、医療機関とケアマネジャー双方の主張や説明を、調整者という立場であるが、実質的なリーダーシップをとっていたこと。

【結  果】
 平成28年9月2日に医療機関とケアマネジャーの合同会議で翌月の10月からの運用に双方が合意した。同年12月に「入退院連絡調査」を再度実施し、連絡率を調査する予定である。開始の10月を待たずにケアマネジャーからは入院時連絡が来ており出だしは順調という印象である。

【考  察】
 各地域で有志による医療介護連携の取り組みが実施されているが、その範囲は有志であるが故に一部地区及び関係者内のルールに留まり、地域全体の合意で進んでいない。行政がリーダーシップを発揮することにより、組織対組織での協議となり、かつ対象が地域全体におよび、中立性と公平性が担保できるものになる。

出自はこちら

http://hmsw.info/assets/files/2016kensyu/161105tirasi.pdf

※参考文献
1.地域ケアネットワークと退院援助-北海道北見市での取り組み- ソーシャルワーク学会誌28:95-98、2014

http://www.jsssw.org/wp/wp-content/uploads/2014/06/2014-28-7.pdf


2.「まちづくりと地域包括ケアシステムづくり」リハビリテーションと地域連携・地域包括ケア (公社)日本リハビリテーション医学会 2013.6 診断と治療社

http://shindan.co.jp/books/index.php?menu=10&kbn=1&cd=202200

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