連携と目的の不可分な関係

約12年前、診療報酬で「地域連携パス※(地域連携診療計画管理料)」に大腿部頸部骨折に加え、脳卒中が追加された。

※地域連携パスとは 地域連携パスとは、ある疾患に罹患した患者さんを中心として、地域で医療・介護に関わる人々がそれぞれの役割分担を行い、お互いに情報共有をすることにより、今後の診療の目標や注意点を明確にし、チームで患者さんを支えていくための仕組みです。地域連携パスには2種類あると言われてきました。一つは脳卒中など急性疾患に罹患したとき、まず急性期病院に入院しますが、その後回復期リハビリ病院への転院が必要となったとき、医師・看護師・リハビリスタッフなど多職種の情報や診療計画を転院先にスムーズに引き継ぐという「一方向性連携パス」です。もう一つは糖尿病など、長期にわたり診療してゆくことが必要であるが、普段の診療はかかりつけ医が行ない、必要に応じて専門医の診療を受け、かかりつけ医の支援をするという「循環型連携パス」です。(国立研究開発法人国立循環器病研究センターHPより)

つまり地域連携とは、自分の病院で治療を完結せず、次の段階でのサポートが得意な病院へ患者を移動させ、一つの病院だけではなく地域の多くの病院があたかも一つの大きな病院のごとく協力し合う仕組みと考えていいだろう。ところで「地域連携」という語はこの辺りから全国で使用されるようになった。しかしこの仕組みが成立するためには、患者の診療基準と診療計画を標準化し、これを引き継ぐ「ルール」を関係機関が守っていることが大前提である。連携とはこのルールを守ることを言うのであり、最近「あの病院とは連携出来ているから紹介できる」といった「知り合い」や「協力」を指して使用するものではないと言える。

医療介護連携の観点からすると、地域にある多様な医療機関と介護事業所のそれぞれが自分達がケアしたい対象者のみを選び、それ以外は自分たちには関係ないという態度を決め込むというバラバラの指向ではない。地域の多くの対象者が困っている「間(はざま)の課題」に気がつき、この課題の解決という同一の目標へ向かってお互いに協力し合うことが医療介護連携である。よく知った相手だから連携しているのではない。両者の間に地域の課題解決という共通の目標を認識しているかどうかが「連携しているかどうか」の一丁目一番地だ。

そうすると自らの都合だけで事を進められなくなる。連携を進めることは少しずつ相手や対象者の存在によって私達が今までの取り組みから少しずつ「変わっていこと」が必要になる。

このことについて8年前、札幌市介護支援専門員連絡協議会へ述べたものを発見したので多少古いが掲載しておく。

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連携とは「変わる」こと

ケアマネSAPPORO 第89号(2014.8.1発行)へ掲載

【入院日数の短縮と在宅医療の推進】

 介護保険制度ができ15年が経った。私が1998年に介護支援専門員試験を受験した当時は「制度あってサービスなし」などと揶揄されたものだ。現在はどうだろう。格段にサービス種類と量が増え、選択肢が増えた。介護支援専門員の皆さんが利用者や家族のニーズを的確に捉え、代弁してきた証だと言える。活動を1999年から開始した貴会の先見性と行動力に感服し、敬意を表する次第である。

 2025年問題とは、高齢化率の増加、社会保障財源の確保と介護サービスの質という三つの要素の組み合わせとバランスをどう決着つけるかの問題である。欠かせないのは、要介護者の生活機能の維持を支える医療とのかかわりだ。医療保険制度も大胆な方策が実施されている。介護支援専門員の方と密接に関係するものは2つある。入院日数の短縮と在宅医療の推進だ。

【入院期間短縮に対応した既成概念の打破】

 入院日数の短縮化とは「早く治して早く退院する」指向だ。急性期では疾患別のクリティカルパス(治療計画書)に基づき、治療手順は標準化されている。つまり「入院時に退院日が決定する」のだ。在院日数が長期化すると医療機関の収入は減少する。医師の胸三寸で治療計画が決められていた時代は過ぎた。今は「診断と治療計画への適応」に主眼が置かれ、あとは予定した計画に対する「実行(Do)」が病院内で粛々と展開される。

 予定通りに治療とその結果が進めば問題はない。しかし相手は高齢者である。入院中に合併症が生じたり、認知機能が低下したりする。高齢者の入院にはリスクが伴う。「早く治して早く退院する」ことを医療機関と介護支援専門員が協力する新しい展開がこれから更に求められる。

 当協会(北海道医療ソーシャルワーカー協会)が2012年に介護支援専門員の皆さんを対象とした調査*1 によると、退院前に医療機関から介護支援専門員へ連絡が無かった割合(退院連絡漏れ率)は全道44%に対し、札幌市では38%であった。数値の高低に関する評価は別にして、これをゼロにしていく取り組みが必要だと個人的には考えている。では連絡が漏れている方々はどんな方なのか。私は「要支援」の方だと思っている。つまり「病院は要支援を見つけられない」のではないかということだ。例えば月間1,000名以上の入退院がある大病院では、連携室の看護師やソーシャルワーカーは要支援者を見つけられない。いや「見つけられない」というより「そこまで手が回らない」という言い方が正確な表現だ。絶対的なマンパワーが足りないのだ。ではどうしたらいいか、足寄町の取り組みがヒントになる。

 足寄町では、二次・三次救急患者は町から65キロ離れた帯広市内へ搬送される。従来、治療は終了しても医療機関との連絡調整が不十分だった。そのため町内の特養待機者は100名を超えていた。ところが平成20年より、足寄町国保病院の連携室や町内の地域包括支援センターから帯広市内の医療機関へ直接訪問し、医療機関の求めに応じ、早期から相談調整を開始した。その結果急性期病院から自宅への直接退院が増加。特養待機者も減少したというのだ。医療機関から早く連絡を受け、町の地域包括支援センターが出張って退院調整に取り組んだ結果である。連携とは「方法の変更」ではなく「既成概念の打破」である。

 医療機関から早くに連絡をもらうにはどうしたらいいか。退院可能な日から逆算して医療機関に出向き、退院調整期間を拡大する仕組みをつくることだ。入院期間の短縮が求められる医療機関に対し、介護支援専門員側から協議を持ちかける絶好の時期が今、到来している。

  医療機関側からの連絡を待つ受動姿勢から能動的に医療機関へ入り込んでいく「変化」が求められるだろう。これに関しては貴会と共に、当協会も積極的に医療機関からの早期の連絡、連絡漏れゼロを目指した活動をしたいと考える。

【在宅医療の推進と越境する専門性】

 退院調整と並び重要なのが在宅医療の推進だ。こちらは入院治療と異なり、日常的な高齢者特有の疾患に予防的に対応することが求められる。対象疾患は尿路感染症、肺炎や脱水などだ。在宅医療は急性疾患に対する治療より、健康状態を長く続けるための予防的対応に尽きる。よく聞く悩みは訪問診療医がいないとか、在宅を理解してくれる医師が少ないなどだ。しかし在宅医療は医師だけが主だとは思わない。確かに医師は在宅医療の要であるが、何もかにも医師へ相談したら医師の身がもたない。私は訪問看護師と薬剤師の知識と技術を大いに活用すべきだと思う。

 私達の地区(北見市)では昨年、介護支援専門員の方を対象に「ケアプランに活かせる使える医療情報講座」*2 を開講した。医師、薬剤師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカーらを講師に、医療機関から提供される医療情報を効果的にケアプランへ活用することを目的とした研修会である。特に介護支援専門員の方に好評だったのは「薬に関する相談を調剤薬局へしてもいいことが分かった」であった。剤形の見直しや薬の影響による心身機能の変化を医師に相談する前に調剤薬局の薬剤師に相談できること、相談方法も伝授した。「(薬剤師は)今後相談しやすい社会資源として活用できる」と好評であった。訪問看護師の講義後のアンケートでは「看護師や医療職が見るフィジカルポイント、医療職が知りたい情報、伝える方法のポイントを私達が知ることは有効だ、何を見ればいいか分かった」と好評であった。連携とは「役割の分担」ではなく「越境する専門性」である

【おわりに】

医療と介護の連携が重要と言われる。何故連携が重要と言われるのか。それは人口減少と高齢化が進み、国の財源が不足するなかで、限りある医療介護資源を最大限活用しつくすことが絶対必要だからだ。そのためには今までの方法では通用しないことを自覚すべきだと思う。制度が求めているのは、接点の乏しかった他職種(医療職)と協働した結果、医療介護分野の費用対効果が高まることだ。介護支援専門員がさらに重要な位置づけを獲得するためにはこの医療職との協働への努力が必要だ。どうすればよいのか。まず病院のソーシャルワーカーが地域との窓口となり、介護支援専門員と協力して早期の退院支援を行うことだ。

  次に介護支援専門員はケアプラン作成過程で避けていた医療面の問題について「どこから分からないか」を見定めることだと思う。連携とは自分から積極的に「変わる」ことだから。

*1「退院時連絡(医療機関から介護支援専門員へ)調査」第一報  (北海道医療ソーシャルワーカー協会 HP より)

*2「ケアプランに活かせる使える医療情報講座」 (北見市医療福祉情報連携協議会 HP より)

http://www.kitamaru.net/

掲載紙はこちら↓

https://sapporo-cmrenkyo.jp/wp-content/uploads/2019/10/089_20140801.pdf

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